生成AIへ文章の下案や要約を頼むとき、入力欄へ貼り付ける内容が「外へ渡してよい情報か」を先に確認する必要があります。便利そうだから試す、という順番ではなく、情報の種類と利用条件を確認してから使う順番にします。
これは生成AIを使わないようにするための記事ではありません。仕事で試すなら、何を入力しないか、誰が確認するか、ダミーデータで代替できるかを決め、安全に試せる範囲を作るための実務チェックです。
この記事は一般的な整理であり、個別の法的判断を示すものではありません。会社の規程、契約、利用するサービスの最新規約、必要に応じた専門家の確認を優先してください。
最初に知っておきたいこと
個人情報保護委員会は、生成AIサービスの利用に関する注意喚起で、個人情報を含む入力について利用目的の範囲やサービス提供者による取扱いを確認すること、一般利用者も利用規約やプライバシーポリシーを確認することなどを示しています。また、生成AIの応答には不正確な内容が含まれる可能性があると説明しています。
経済産業省のAI事業者ガイドライン第1.2版も、AIを利用する事業者を含めた考え方と確認材料をまとめています。
実務では、「会社情報」という大きなくくりでは判断できません。公開済みの会社案内と、顧客名が入った見積書では扱いが異なります。まず情報を分けます。
1.会社の利用ルールを確認する
最初に、会社が生成AIの利用を認めているか確認します。
- 利用できるサービスが指定されているか
- 個人アカウントの利用が認められているか
- 入力してはいけない情報が定められているか
- 出力の確認・保存・共有方法が決まっているか
- 上司や情報システム部門への申請が必要か
社内ルールが見つからない場合、「禁止されていないから使える」とは判断しません。誰に確認すべきかを探し、確認できるまでは公開情報や自分で作った架空データに限定します。
個人で契約したサービスを仕事へ使うと、会社が利用条件や保存状況を把握できない場合があります。アカウントの種類も含めて確認が必要です。
2.個人情報が含まれていないか確認する
氏名、メールアドレス、電話番号、住所だけが個人情報とは限りません。社員番号、顧客番号、所属、役職、取引履歴など、ほかの情報と組み合わせて個人を識別できる内容にも注意します。
たとえば、次の情報をそのまま貼り付けないようにします。
- 問い合わせメールの署名
- 履歴書や面談記録
- 顧客対応履歴
- 社員ごとの評価や勤怠
- 個人名を含む議事録
「名前だけ消した」状態でも、会社名、部署、案件、日時がそろうと対象者が分かることがあります。匿名化できたつもりで進めず、目的に必要な項目だけに減らします。
3.顧客・取引先の情報が含まれていないか確認する
自社が入力してよいと思っても、顧客や取引先との契約で外部サービスへの提供が制限されていることがあります。
確認対象には次のようなものがあります。
- 顧客名、担当者名、連絡先
- 見積金額、請求内容、入金状況
- 商談中の提案内容
- 取引先から預かったファイル
- 未公開の商品やキャンペーン
- 苦情、障害、トラブルの記録
文章を分かりやすくしたいだけなら、固有名詞や金額を架空の値へ置き換え、文章構造だけで試せる場合があります。実データを入力する必要が本当にあるかを先に問い直します。
4.機密情報・認証情報が含まれていないか確認する
個人情報でなくても、会社の外へ出せない情報があります。
- 未公開の経営計画や価格
- 原価、利益率、取引条件
- 製品設計、ソースコード、内部手順
- セキュリティ上の構成情報
- APIキー、パスワード、アクセストークン
- 社内だけで使うURLやファイルパス
特に認証情報は、質問の一部としても貼り付けません。エラー解決を相談するときは、キーの値を削除し、必要な周辺情報だけを一般化します。
「すでに社内の多くの人が知っている」ことと「外部サービスへ入力してよい」ことは別です。情報の管理区分と契約上の扱いを確認します。
5.入力内容がサービス側でどう扱われるか確認する
生成AIサービスによって、入力内容の保存期間、学習への利用、管理者設定、データの保存地域、削除方法などは異なります。同じサービス名でも、無料、個人、法人向けで条件が異なる場合があります。
確認する場所は、利用規約、プライバシーポリシー、データ利用に関する説明、契約プランの管理設定です。
最低限、次を確認します。
- 入力と出力が保存されるか
- サービス改善や学習に利用されるか
- 利用しない設定があるか
- 管理者が利用状況を管理できるか
- 削除や保持の条件は何か
画面に「履歴を残さない」設定があっても、それだけで会社の利用基準を満たすとは限りません。契約内容と社内ルールをあわせて見ます。設定や規約は変わる可能性があるため、以前確認した記憶だけで判断しません。
6.ダミーデータで代替できないか考える
仕事の相談や試作では、実データがなくても確認できることが多くあります。
たとえば、メール文面を整えるなら、会社名を「株式会社サンプル」、担当者名を「担当者A」、金額を架空の値へ置き換えます。Excel集計の方法を考えるなら、列名を一般化し、数行の架空データを作ります。
ダミーデータを作るときも、実データの一部を少し変えただけにしないよう注意します。珍しい案件名や自由記述が残っていれば、元の情報を推測できる可能性があります。
確認したいのが文章の構成、分類ルール、画面の流れなら、実在しない内容で十分かもしれません。まずダミーで試し、実データが必要になる地点を明確にします。
7.AIを使わずに解決できないか考える
生成AIが話題になっていても、対象の作業に最適とは限りません。
たとえば、毎月同じ列を集計する作業はPower Query、決まった条件でファイル名を変える作業は通常の自動化、よく使う文章はテンプレートで対応できる場合があります。
AIを使わない方法には、次の利点があります。
- 同じ入力に対する結果を説明しやすい
- 入力データを外部サービスへ渡さずに済む場合がある
- 担当者が処理内容を追いやすい
- 会社の既存環境で運用できる場合がある
反対に、表現が毎回違う文章から候補を拾うなど、AIの柔軟さが役立つ作業もあります。AIを使うかどうかは、作業内容と情報の種類を確認して決めます。
7項目は、順番に確認する
初めて試すときは、すべての会社データを対象にせず、公開情報だけでできる小さな用途を選びます。
たとえば、一般公開済みの商品説明を読みやすくするための下案を作り、元情報と照合するところから始められます。確認者、確認基準、入力禁止情報を決め、問題があれば中止できる範囲にします。
ルールが整っていない場合は、まず「入力してよい例」「入力してはいけない例」「迷ったときの確認先」を一枚にまとめる方法があります。高度な仕組みより、日々の判断をそろえる方が先です。
よくある勘違い
有名なサービスなら会社情報を入れてよい
サービスの知名度だけでは判断できません。利用プラン、設定、契約、会社ルール、入力内容を確認します。
個人名を消せば安全になる
会社名、部署、案件、日時、自由記述の組み合わせから個人や取引を推測できることがあります。目的に不要な情報を削り、ダミーへ置き換えます。
AIの回答が自然なら正しい
自然な文章でも、内容が正しいとは限りません。社内文書や顧客向け文章へ使う場合は、元情報と照合し、担当者が確認します。
KOTOKUMUの考え
KOTOKUMUへの初回相談では、実顧客データ、機密情報、認証情報、パスワード、不要な個人情報、不要な添付ファイルを送らないよう案内しています。
相談の最初に必要なのは実ファイルではなく、「どのような作業か」「どこで困るか」「何を確認したいか」です。列名を一般化した例や、架空データで流れを確認し、対応可能性を整理します。
AIを使う場合も、入力範囲、出力の確認、誤りへの対応を先に考えます。通常の自動化やExcelで十分なら、AIを使わない選択も含めます。
まず何から始めるか
生成AIを開く前に、入力したい内容を別のメモへ書き出し、次の順で確認してください。
- 会社で利用が認められているか
- 個人情報がないか
- 顧客・取引先情報がないか
- 機密情報・認証情報がないか
- サービス側の取扱いを確認したか
- ダミーへ置き換えられないか
- AI以外の方法で足りないか
迷う項目が一つでもあれば、その情報は入力せず、会社の確認先へ相談します。使う技術が決まっていない段階では、AI・DXの進め方相談で考え方を確認できます。KOTOKUMUの情報取扱いはプライバシーポリシーに記載しています。メール相談の前にはお問い合わせページの注意事項をご確認ください。
確認した一次情報
個人情報保護委員会の「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」と、経済産業省のAI事業者ガイドライン第1.2版を2026年9月1日に確認しました。注意喚起の本文を転載せず、個人情報、利用目的、サービス側の取扱い、規約・プライバシーポリシー、出力の正確性に関する事実を要約しています。7項目の順序、実務例、ダミーデータの作り方、AI以外との比較はKOTOKUMU独自の整理です。